No.16 当時の面影を残す旧村川別荘
「我孫子はかつて別荘地として多くの文化人を惹きつけた」--旧村川別荘を訪れると、その理由を肌で感じることができます。
我孫子市寿にある「旧村川別荘」は親子二代にわたる西洋古代史学者、村川堅固が建設し、堅太郎が守った邸宅で、樹林の中に溶け込むように建っています。現在は一般公開され、庭園・建物ともに誰でも自由に見学ができます。
別荘は、1921年に建設された「母屋」と、1927年から翌年にかけて建てられた「新館」の2つからなっています。木々に囲まれた小径を抜けると、まず目に入るのは純和風の母屋。室内に入ると、濃い灰色に見える壁は「ねずみ漆喰」と呼ばれ、モダンで落ち着いた雰囲気を醸しています。
一方、新館は、沼を見下ろす展望を意識した大きな窓や寄木モザイクの床が印象的です。ここにはイギリス人陶芸家バーナード・リーチが手がけた三角椅子も残されています。
私が訪れた日は青もみじが鮮やかで、11月ごろになると紅葉が見頃を迎えるそう。文化人が集ったという当時の我孫子にタイムスリップしたような、時間を忘れる空間です。
季節を変えて何度でも訪れたい、我孫子の魅力を感じられる場所でした。
文:寺田さおり
