令和5年度水道事業経営方針

水道局は、昭和43年に水道水の供給を始めてから、50年以上にわたり安全な水道水を安定的に供給してきました。当初は水需要の急増に対応するため、施設を新設する拡張事業に取り組んでいましたが、近年は、人口減少など社会情勢の変化に伴い水需要が減少する中、施設の老朽化への対応や大規模災害への備えが求められています。
平成30年に国は、水道事業者の経営基盤強化を図るため、水道法の大幅な改正を行いました。こうした国の動きを踏まえ、水道局では平成30年度に我孫子市水道事業ビジョンと我孫子市水道事業基本計画、我孫子市水道事業経営戦略を策定しました。現在水道局は、これらに定めた取り組みを着実に執行していくことを、経営の基本としています。
水道事業の本旨は、水道を取り巻く時代や環境がいかに厳しくあろうとも、その変化に的確に対応しつつ、水質基準に適合した水が、必要な量を、いつでも、どこでも、誰でも、合理的な対価をもって、安心して利用可能であり続けるということです。水道が使えなくなる、いわゆる断水になれば、市民の皆さまの生活に多大なる支障が生じます。令和元年度の大規模な台風災害により断水した地域で、高齢者世帯に当市が応援給水を行った際には、「自宅で水が出ることがいかに便利でありがたいことか」という多くの声を伺いました。
これらのことをふまえ、水道局では、水質基準に適合した安全な水を作り、常に給水できる強靱な水道を、持続的に運営していけるよう、将来に向けて経営努力を続けていくことが重要だと認識しています。

それでは、続きまして令和5年度の主な取り組みについて申し上げます。ここからは、水道事業ビジョンに掲げた「安全」、「強靱」、「持続」の3つの基本目標に沿ってご説明します。

はじめに『基本目標1．安全』です。
令和5年度も水源から蛇口に至るまでの総合的な水質管理を行うため「我孫子市水道局 水質検査計画」に基づく水質検査を行います。また自己水源である深井戸の計画的な機能保全を図るため、「取水井維持活用方針」に基づき2か所の深井戸の浚渫工事を行います。

次に「基本目標2．強靱」です。
施設の強靱性維持にむけ、浄水場整備では妻子原浄水場と湖北台浄水場の非常用発電機更新工事を行います。また、水道管路整備では、経年配水管路および基幹管路を耐震化するため、6つの地区で総延長約4キロメートルの布設替え工事を行います。
災害対応の強化では、県内水道事業体間の各種情報伝達訓練に参加するほか、九都県市合同防災訓練や避難所運営訓練において、市民と連携した応急給水訓練を実施します。また、水道局の危機管理体制強化のため職員による事故対応訓練を行うとともに、災害時に必要な機材の整備を進めます。

続いて「基本目標3．持続」です。
水資源の適正運用では、北千葉広域水道企業団からの受水と自己水源の運用コストをふまえた取水・受水管理を引き続き行います。このほか、漏水防止対策として、漏水調査を実施します。
業務効率化方策では「浄水場設備運転 及び 維持管理業務等 包括委託」と「料金・給水・会計業務等 包括委託」を着実に実施し、官民連携により、引き続きお客様サービス向上と業務効率化に努めます。このほか、次世代の水道実務を担う人材育成のため、職責に応じた研修を実施します。
財政健全性の確保では、水道施設整備に要する費用負担を、世代間で平準化するために、引き続き企業債を活用します。
将来につなげる新施策の考察では、水道にかかる新技術に関して、他事業体の最新知見の動向を注視し、調査・研究を進めます。
さらに、令和5年度には水道事業基本計画と水道事業経営戦略の見直しを行います。冒頭で申し上げたとおり、これらは水道事業経営の基本となるものです。いずれも計画期間は令和10年度までですが、新型コロナウイルス感染症やウクライナ問題をはじめとする社会情勢の変化により、計画時に想定した収益や費用の当初計画値と実績値との間には乖離が生じています。このため計画期間の中間年度である、令和5年度に水道事業基本計画と水道事業経営戦略を点検・総括し、現況に即した見直しを行うこととしたものです。
以上が、令和5年度当市水道事業の主な取り組み内容です。

続きまして、本市に水道用水を供給する「北千葉広域水道企業団」の令和5年度の主な事業について申し上げます。同企業団では、令和2年度から11年度までの10年間を計画期間とする第15次経営戦略を策定し、事業を進めています。
令和5年度には「導・送水管路更新の計画的な推進」、「既存施設の現況に即した保全工事及び更新工事の着実な実施」、「施設能力強化策の推進」の3つを重点施策として掲げています。具体的には導水管更新事業のほか、北千葉浄水場から、当市を含む各水道事業体への送水管更新工事に向けた設計委託などを実施する予定です。

最後となりますが、今後、本市の水道事業においては、長期的には水需要が減少して料金収入の減収が進む一方で、水道施設の更新等に多大な資金が必要となっていくと想定しています。
このように水道を取り巻く経営環境はますます厳しさを増していますが、水道局としては、将来にわたって安全な水道水を安定的に供給できるよう、健全な水道事業運営に努めてまいります。